学校に行きたいのに行けないのはなぜ?子どもの心の葛藤

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「学校に行きたいと言っているのに、どうして行けないのだろう……」

「本当は、学校に行く気がないのでは……」

「前日の夜には『明日は行く』と言っていたのに、朝になると動けなくなる……」

このような姿を見ていると、子どもの言葉をどこまで信じてよいのか、分からなくなりますよね。

学校に行きたいのに行けないのは、多くの場合、意志が弱いからではありません。

失敗することや、人からどう思われるかという怖さが、「学校に行きたい」という気持ちを上回ってしまうからです。

この記事では、学校に行きたいのに行けない子どもの心の中で、何が起きているのかをお伝えします。

学校に行きたいのに行けない理由

「明日は行く」と言いながら、朝になると行けなくなる子どもの多くは、学校という場所そのものだけを怖がっているわけではありません。

学校へ行った先で、

  • 周りからどう思われるだろう
  • 勉強についていけるだろうか
  • 失敗して恥ずかしい思いをしないだろうか
  • 休んでいたことを何か言われないだろうか

といったことを不安に感じています。

ただし、本人も自分の気持ちをはっきりと言葉にできているとは限りません。

さまざまな不安が重なり、「何となく行きたくない」「理由は分からない」と感じていることもあります。

親御さんからすると、

「昨日は行くと言っていたのに、どうして朝になると変わるの?」

と混乱してしまうと思います。

しかし、夜に「明日は行こう」と思った気持ちも、朝になって「やっぱり行けない」と感じた気持ちも、どちらも本人にとっては本当です。

前日の夜は、まだ登校が現実から離れています。

そのため、「明日は行けるかもしれない」と思えます。

ところが、朝になって登校時間が近づくと、急に現実味を帯びてきます。

すると、行った先で起こるかもしれない失敗や周囲の視線への不安が強くなり、「行きたい」という気持ちを上回ってしまうのです。

学校を休むと一時的に楽になる

学校を休むと、その日に感じていた不安は一時的に軽くなります。

しかし、「不安になったら休む」という行動が繰り返されるほど、学校へ戻るハードルは高くなっていくことがあります。

たとえば、次のような流れです。

学校へ行こうとする

失敗や人の目が怖くなり、不安が強くなる

学校を休む

その日の不安が軽くなる

翌日、もう一度学校へ行こうとする

勉強の遅れや周囲の反応など、新たな不安が増える

前日よりも休むという行動を選びやすくなる

このように、一度休むことで今日の不安は軽くなりますが、明日の不安は大きくなっていくことがあります。

「学校へ行きたい」という気持ちと、「失敗したくない」「怖いから避けたい」という気持ちが同時にある状態は、心理学では「接近・回避の葛藤」1と呼ばれます。

接近・回避の葛藤とは、一つのことに対して、「近づきたい気持ち」と「避けたい気持ち」の両方を抱えている状態です。

たとえば、

「好きな人に気持ちを伝えたい。でも、断られて傷つくのが怖い」

「おいしいものを食べたい。でも、太るのは避けたい」

というように、望む気持ちはありながら、その先にある不安や不利益を考えて動けなくなることがあります。

不登校の子どもも同じように、

学校には行きたい。でも、失敗する自分や、周囲からどう見られるかと向き合うのが怖い

という二つの気持ちの間で葛藤しています。

学校に行く気がないわけでも、親に嘘をついているわけでもありません。

行きたい気持ちはありながら、そのときの不安に負けて、学校を休むという行動を選んでいる状態なのです。

この状態が続くと、

  • 勉強の遅れが大きくなる
  • 友達に会いづらくなる
  • クラスの様子が分からなくなる
  • 学校で何を聞かれるのか不安になる
  • また続かなかったらどうしようと考える

など、学校へ戻ることへの心配が増えていきます。

休めば今日の不安は減りますが、休んだ分だけ明日の不安が大きくなり、さらに行きづらくなるという悪循環が起こることがあります。

子どもが話す理由を取り除けば登校できるとは限らない

子どもが口にする「学校へ行けない理由」は、決して嘘とは限りません。

勉強についていけない、先生が苦手、友達との関係がうまくいかないなど、本人が話していることは、実際に困っていることなのでしょう。

ただし、それが登校できない根本的な原因とは限りません。

その奥には、

  • できない自分を認める怖さ
  • 失敗して傷つく怖さ
  • 困ったときに対処できる自信のなさ
  • 思い通りにならない状況への弱さ

が隠れていることがあります。

そのため、子どもが話した一つの問題を解決しても、別の不安が出てくることがあります。

「先生が変われば行ける」

「苦手な授業がなくなれば行ける」

「友達との問題が解決すれば行ける」

このように条件を一つずつ整えても、今度は別のことが不安になり、動けなくなる場合があります。

学校生活では、不安や苦手なこと、思い通りにならない出来事をすべてなくすことはできません。

ですから、すべての不安を取り除くことだけを目指すのではなく、不安や苦手なことがあっても、自分で対処し、折り合いをつけながら過ごせる力を育てていくことが大切です。

学校に行きたいのに行けない子どもの特徴

学校に行きたいのに行けない子どもには、真面目で責任感が強く、物事をきちんとやろうとする傾向が見られることがあります。

真面目さや責任感は、本来その子が持っている長所です。

ただし、状況に合わせて考え方や行動を変えることが苦手だと、その長所が本人を苦しめることがあります。

たとえば、

  • 手を抜くことが苦手
  • 予定外の出来事に弱い
  • 臨機応変に対応することが苦手
  • ゼロか100かで考えやすい
  • 失敗を必要以上に大きく受け止める
  • 完璧にできなければ意味がないと感じる
  • 人に頼ったり助けを求めたりすることが苦手

といった特徴です。

「きちんとやらなければならない」という気持ちが強いため、「少しくらいできなくても大丈夫」と考えることが難しくなります。

その結果、

「勉強の遅れをすべて取り戻してから戻りたい」

「不安がなくなってから学校へ行きたい」

「周りと同じようにできる自分になってから戻りたい」

と考えることがあります。

しかし、その条件をすべて満たそうとするほど、学校へ戻るためのハードルは高くなっていきます。

必要なのは、真面目さや責任感をなくすことではありません。

真面目に取り組む力に加えて、

  • 分からないことを人に聞く
  • できないことがあっても受け入れる
  • 完璧でなくても一度やってみる
  • 失敗しても立て直す
  • 必要に応じて手を抜く
  • 困ったときに助けを求める

といった選択肢を増やしていくことです。

不安がなくなれば学校へ戻れるわけではない

親御さんとしては、不安を減らし、本人が十分に自信を取り戻してから学校へ戻してあげたいと思われるかもしれません。

もちろん、心身の状態を整えることは大切です。

ただし、すべての不安がなくなるまで待ってから学校へ戻ることは、現実には難しい場合があります。

学校へ戻れば、

  • 分からない授業がある
  • 友達とのやり取りで戸惑う
  • 思い通りにならないことが起きる
  • 失敗する
  • 恥ずかしい思いをする
  • 予定どおりにいかない

といった出来事は、どうしても起こります。

不安を完全になくすことを目指していると、「まだ不安があるから行けない」という状態が続きやすくなります。

大切なのは、不安をゼロにすることではありません。

不安があっても一歩を踏み出し、困ったときには対処し、失敗しても立て直せる経験を重ねることです。

「行ける状態になるまで待つ」のではなく、不安や失敗と折り合いをつけながら、少しずつ行ける状態をつくっていくという視点も必要になります。

学校に行きたいのに行けない子どもを理解するために

学校に行きたいのに行けない子どもへの関わり方は、お子さんの状態や不登校になった背景、親子関係、家庭の状況によって異なります。

そのため、

「この言葉をかければよい」

「このように接すれば学校へ行ける」

と、一つの対応をすべての家庭に当てはめることはできません。

まず大切なのは、その日の言葉や行動だけで、子どもの気持ちを判断しないことです。

夜に「明日は行く」と言った気持ちも、朝になって「行けない」と感じた気持ちも、どちらも本人にとっては本当です。

「行くと言ったのに行かなかった」と約束違反として捉えるのではなく、登校が現実に近づくにつれて、不安が強くなった可能性を考える必要があります。

また、「学校の何が嫌なのか」という理由だけを見るのではなく、

学校を意識する

不安が強くなる

学校を休む

一時的に安心する

翌日はさらに行きづらくなる

という流れが繰り返されていないかを見ることも大切です。

親が良かれと思って説得を続けることで、「学校へ行くか、行かないか」という問題が、「親の言う通りにするか、抵抗するか」という親子の問題に変わってしまうこともあります。

すると、子どもは学校と向き合うよりも、親を納得させることや、行かない理由を正当化することに力を使うようになります。

大切なのは、子どもの言葉を疑うことでも、すべての不安を親が取り除くことでもありません。

まずは、今、子どもの中でどのような葛藤が起きているのかを整理することです。

親子だけでは状況を整理できない場合や、説得と反発が繰り返されている場合は、家庭だけで抱え込まず、その子に合った第三者へ相談することも一つの方法です。

GoTodayだけが唯一の方法ではありません。

学校の先生、親族、信頼できる大人、医療機関、相談機関など、その子の状態に合った人や機関が力になることもあります。

ただ、教室復帰を目指しているものの、家庭だけではどのように対応すればよいか分からず、親子ともに行き詰まっている場合は、復学を専門とする第三者を入れることも一つの選択肢です。

お子さんが「学校へ行きたい」という気持ちを持ちながらも動き出せず、家庭での対応に迷われている場合は、GoTodayへご相談ください。

脚注

  1. 葛藤・コンフリクト(レヴィンとラザルスによる分類) ↩︎