「不安が強いのに、なぜ前もって準備しないの?」
お子さんを見ていて、そう感じたことはないでしょうか。
⚫︎発表があるのに練習しない
⚫︎宿題が終わっていないのに手をつけない
⚫︎そして当日になって「無理!」とパニックになる
不安なら準備すればいいのに…と、親としては思いますよね。ですが実は、ここには不登校のお子さんに多く見られる特徴があります。
GoTodayはこれまで20年以上、年間40名ほどの不登校のお子さんの学校復帰を支援してきました。実際にご相談の中でも、この「不安が強いのに準備しない」というお悩みはとても多く、不登校のお子さんにも共通して見られる特徴の一つです。
この記事では、不安が強い子どもがなぜ準備しないのか、その理由と親としての対処法についてお伝えします。
不安が強い子どもはなぜ準備しないのか
不安が強いお子さんは、その不安の強さのわりに準備をしません。
例えば、クラスで発表があるとき、本来であれば前もって練習しておけば少し安心できるはずです。ですが、何もせずに当日の朝を迎え、「練習してないから無理」とパニックになって学校を休んでしまうことがあります。
また、土日で宿題をやる時間があったにもかかわらず、月曜日の朝になって「終わってないから行けない」と言うこともあります。なぜ準備しなかったのか聞いても、「時間がなかった」と言ったり、「やろうと思っていた」と答えたりします。
そして「次は早めにやろうね」と伝えても、また同じことを繰り返してしまうのです。
親御さんからすると、
「そんなに不安なら先にやればいいのに」
「困ると分かっているのに、なぜ何もしないの?」
と感じてしまうと思います。
ですが、ここで大事なのは、不安があることと、準備して行動できることは、別だということです。
不安が強いからこそ、かえってその不安を直視したくなくなり、準備そのものから目をそらしてしまうことがあります。準備を始めるということは、「その不安な出来事に向き合う」ということでもあります。
ですから、準備をしないのは「不安がないから」ではなく、むしろ不安が強すぎて、そこに手をつけたくないということも多いのです。
不安が強い子どもは忍耐力が無いわけではない
このような様子を見ると、「この子は忍耐力がない」「我慢ができない」と思われるかもしれません。ですが、私たちは単純にそうではないと考えています。
むしろこのタイプのお子さんは、やりたくないことを「やらない」と決めて、それをかなり頑固に貫く力があります。親や先生に何を言われても動かない。つまり別の言い方をすれば、自分の中で納得していないことには動かない強さがあるとも言えます。
そのため、ただ気が弱い、ただ怠けている、という見方だけでは実態を捉えきれません。
また、「逃げるのが上手い」という特徴もあります。これは悪く聞こえるかもしれませんが、見方を変えると、
⚫︎嫌なことを避ける感覚が鋭い
⚫︎自分にとって不利な状況を察知する
⚫︎別の道を探そうとする
という力でもあります。
ですから、特性そのものが悪いわけではありません。問題なのは、その特性が学校生活のような「やりたくなくてもやらなければいけない場面」で悪い形で出てしまうことです。
不安が強い子どもほどリスクを取らない
不安が強いタイプのお子さんは、とても慎重です。できるだけリスクを取らず、自分が本当に困るラインは越えないように動いていることが多いです。
例えば、
⚫︎進級に関わるような大事なテストの日は行く
⚫︎本当にまずい場面では最低限の行動は取る
⚫︎家出をしても遠くまでは行かず、結局帰ってくる
など、「完全に危険な橋」は渡らない傾向があります。
また、このタイプのお子さんは「めんどくさい」とよく言います。親御さんからすると、その言葉に腹が立つこともあると思います。ですが、この「めんどくさい」は、単なる怠けだけではありません。
実際には、
「これをやる意味は何か」
「そこまでしてやる必要があるのか」
「もっと楽なやり方はないか」
と考えていることも多いのです。
つまり、効率を求める思考が強いのです。
このタイプは、勉強すると普通にできることも少なくありません。学校に行っていなくてもテストでは点数を取れたり、高校では特進クラスに進むようなお子さんもいます。
頭が悪いからできないのではなく、自分の中で意味が通らないことには力を使わないのです。
不安が強い子どもはなぜ同じことを繰り返してしまうのか
ではなぜ、本人も困ると分かっているのに、同じことを繰り返すのでしょうか。
その大きな要因の一つが、やらなくてもなんとかなる環境です。
不登校のお子さんは、これまで親や先生が後からフォローしてもらうことが多かったはずです。忘れ物を届けてもらう、宿題をやっていなくても問題にならない、発表を休んでもあとでなんとなく済んでしまう。そういう経験が積み重なると、頭では分かっていても、行動は変わりません。
なぜなら、行動を変えるのは「理解」よりも「実体験」だからです。
いくら口で「次は早めにやろうね」と言われても、実際にやらなくても困らなかったのであれば、子どもは心の中では「結局なんとかなる」と学習してしまいます。
しかも、このタイプのお子さんは賢いです。
「どこまでなら大丈夫か」
「どこまでなら許されるか」
「どこまでなら親や先生が尻拭いしてくれるか」
をよく見ているというか感覚でわかってしまうのでしょう。
だからこそ、親が言葉だけで変えようとしても難しいのです。本人の中で本当に変わるのは、自分の行動と結果がつながった時です。
大事なのは「逃げないこと」ではなく「逃げた後」
親としては、「逃げずに頑張ってほしい」と思いますよね。とても自然な気持ちだと思います。ですが、不安が強いお子さんに「逃げるな」と言っても、そこに力はつきにくいです。
なぜなら、このタイプのお子さんは逃げること自体が悪いと思っていない場合も多いからです。本人の中では、「効率よくやっている」「無駄を避けている」「嫌なことを回避している」ぐらいの感覚でいることもあります。
ですから、ただ「逃げるな」と言うだけでは響きません。
ここで大切なのは、逃げたかどうかではなく、逃げた後にどうするかです。
例えば、
⚫︎宿題をやらなかったなら、後から必ずやる
⚫︎発表を休んだなら、別の形でも責任を持ってやる
⚫︎途中で抜けたなら、どこかでけじめをつける
こうした経験を通して初めて、「やらないで済ませること」「やらなかった分を自分で引き受けること」は違うということが分かってきます。
ここを親が曖昧にしてしまうと、子どもの中では「逃げても終わり」「逃げたらそれでチャラ」になってしまいます。それでは、いつまでたっても行動に責任が育ちません。
「やらない自由」と「責任」はセットで考える
これから先、子どもが大人になれば、誰も代わりにやってくれない場面が増えていきます。やるかやらないかは自由です。ですが、その自由には必ず責任がついてきます。
⚫︎やらないなら、その結果を引き受ける
⚫︎間に合わなかったなら、自分が困る
⚫︎信用をなくしたなら、それも自分が背負う
これは厳しい話に聞こえるかもしれません。ですが、社会に出れば当たり前のことです。
だからこそ、子どものうちから「自分の行動には結果がついてくる」ということを経験させていく必要があります。
ここを親が全部かばってしまうと、子どもは一見守られているようでいて、実は自分の人生に責任を持つ力が育ちません。
不安が強いお子さんほど、できるだけ困らないように生きようとします。だからこそ、逃げることを責めるのではなく、逃げた後にどう責任を取るかを教えていくことが大事なのです。
不安が強い子どもに親ができる具体的な対処法
では、親はどう関わればよいのでしょうか。ポイントは、「不安を取ってあげること」ではなく、行動と結果をつなげることです。
先回りしてフォローしすぎない
不安が強いタイプのお子さんは、
⚫︎リスクを取らない
⚫︎できるだけ嫌な思いを避ける
⚫︎効率よく終わらせようとする
という傾向があります。
そのため、親からすると「なぜもっと早く準備しないのか」と歯がゆく感じる場面が多くなります。
例えば、
⚫︎「宿題やったの?」と毎日声をかけて管理する
⚫︎忘れ物を学校まで届ける
⚫︎朝の準備を親が代わりにする
⚫︎締切直前に親が手伝って終わらせる
こうした関わりは、短い目で見ると問題が起きないため、親としては安心できます。
ただ、この対応が続くと、子どもは
⚫︎やっていなくても最後は提出できる
⚫︎忘れても困らない
⚫︎準備していなくてもなんとかなる
という経験を繰り返します。
ここで大事なのは親が悪いわけではないということです。
このタイプのお子さんは、
⚫︎ギリギリまでやらない
⚫︎困る直前まで動かない
⚫︎「どうしようもない状態」をつくる
という形で、親がフォローせざるを得ない状況になってしまうのです。
例えば、夜遅くになって「明日提出なのに終わっていない」と言われれば、親としては放っておくのが難しくなったり、忘れ物に気づいたタイミングが家を出る直前であれば、届けるしかない状況になります。
このように、親が助けてしまうのは甘さではなく、そうせざるを得ない状況になっているだけです。
ただ、この関係が続くと、「やらなくても最終的にはなんとかなる」という形が積み重なっていき、自分で準備する必要を感じにくくなるという状態になりやすくなります。
⚫︎学校のことはやるかどうかは本人に任せる
⚫︎やらなかった結果は本人が受ける
この線引きをはっきりさせてその都度対応が変わるのではなく、一貫して関わることが大切です。
警察を呼ぶか呼ばないかの例え話
少し極端な例ですが、子どもが癇癪を起こして親に暴力を振るい、親でも止められない場面があります。
その時、親としてはとても迷うと思います。警察を呼べば近所の目も気になる。親子関係も悪くなるかもしれない。そこまでしていいのかと悩むのは当然です。
ですが、そこで考えるべきなのは「今どう思われるか」ではなく、「この先どうなるか」です。
暴力は、本来絶対に許されないことです。そこを曖昧にしてしまうと、子どもの中に「これくらいなら大丈夫」「結局なんとかなる」という認識が残ってしまいます。
すると、もっと大きな場面で本人が困ることになります。
親としてはつらい判断ですが、「やったことには責任が伴う」ということを現実として経験させることが、結果的に子どもを守ることにもなります。
大事なのは、嫌われないことではなく、人としてどうあるべきかを教えることです。
不安が強い子どもの特性は「問題」ではない
ここまで読むと、不安が強いこと自体が悪いように感じるかもしれませんが、そうではありません。
⚫︎不安が強い子は慎重
⚫︎ずいぶん先まで考えます
⚫︎危険を察知します
⚫︎無駄を嫌います
⚫︎方向転換も比較的上手
反対に、不安があまりない子は勢いで頑張れる反面、立ち止まって考えることが苦手なこともあります。
つまり、どちらにも一長一短があります。不安が強いからダメ、こだわりが強いからダメ、感情的だからダメ、ということではありません。
大事なのは、特性そのものを否定することではなく、その特性の活かし方です。
よくある質問|休んだ分を家でやらせた方がいいのか?
実際に親御さんから、こんなご相談をいただくことがあります。
「◯◯が怖い、いやだ…と学校を休んでしまった場合、その分を家で勉強させたり、休んだ分のイベントを家で経験させたりした方がいいのでしょうか?」
ご相談の内容、とてもよく分かります。「不安が強いのに準備しない」という傾向は、実は多くのお子さんに見られる特徴ですし、親としてどう関わればいいのか悩みますよね。
「◯◯が怖い、いやだ…と休んでしまった時に、その分家で勉強をさせたり、休んだ分のイベントを家で経験させたりした方がいいのでしょうか?」という点ですが、この対応はあまりおすすめしていません。
というのも、このようなお子さんの場合、「学校に行かなくても、家で代わりのことをやればいい」という考えにつながりやすいからです。
家で何もやらないよりはやった方がいい面もありますが、実際には親御さんの負担がかなり大きくなりますし、親が管理する関係になりやすく、依存や反発が強くなってしまうケースも多いです。
また、このタイプのお子さんは、最初は「家でやる」と約束しても、だんだん理由をつけてやらなくなることがほとんどです。現実的に考えても、ずっと親が付きっきりで管理し続けることは難しいです。
ですので、学校でやるべきことは、やはり学校生活の中で経験していくしかないと考えています。
その上で、親御さんにできることは限られています。
例えば
⚫︎「つらいなら行かなくていいよ」と安易に言わない
⚫︎「行きたくないなら休んでいいよ」と簡単に認めない
といった関わり方ぐらいです。
あとは、個々のケースに応じて対応していくしかありません。あくまで基本的な考え方にはなりますので、実際はお子さんの状況によって関わり方は変わってきますが、ひとつの参考として受け取っていただけたらと思います。
まとめ
不安が強いのに準備しないのは、単なる怠けではありません。
不安が強いからこそ、その不安に向き合う準備そのものを避けてしまうことがあります。また、このタイプのお子さんは賢く、リスクを避けながら、やらなくても済む方法を選びやすい特徴があります。
そして、同じことを繰り返す背景には、「やらなくてもなんとかなる環境」があります。
大事なのは、「逃げないこと」を求め続けることではなく、「逃げた後にどう責任を取るか」を教えていくことです。
やらない自由があるなら、その責任も自分で引き受ける。この感覚は、言葉で教えるだけでは身につきません。経験の中で少しずつ育っていくものです。
今回お伝えしたのは、あくまで基本的な考え方です。実際には、お子さんの性格や家庭の関係性、学校との関わり方によって、対応は大きく変わってきます。
私たちGoTodayでは、こうした不登校のお子さんの特性を踏まえながら、親御さんの関わり方を具体的にお伝えしています。
不安が強い、準備しない、同じことを繰り返す。こうした姿を見ると、親御さんもどう関わればいいのか分からなくなってしまうと思います。
ですが、子どもを直接変えようとするより、親の関わり方を変えていく方が子どもの動き方は変わっていきます。
ご家庭だけで抱え込まず、方向性に迷われている場合は、一度ご相談ください。

